- 文部科学省のワーキンググループが2026年4月30日、不登校の児童生徒向け「特別の教育課程」での新しい学習評価の方向性を提示しました。
- これまで「1」や「−」と評定されがちだった不登校の子どもに、観点別評価・下学年評価・個人内評価という3つの評価方法を選べるようにします。
- 下学年の内容で学んだ場合は、その学年の評価規準で評定が可能になります。
- 記述だけの評価も認められ、数値や段階で示さない選択肢が用意されます。
- 高校入試の調査書では、この特別な評価を加点や記述で活用するよう、文科省が都道府県教育委員会に促す方針です。
不登校の通知表「1」問題、文科省が動いた背景
不登校で学校に通えない期間が続くと、通知表に「1」や斜線がつくことがあります。テストを受けられず、提出物も出せないからです。この評定がそのまま内申書に反映されると、高校入試で不利になります。
文科省はこの問題を放置できないと判断しました。2026年4月30日に開かれた中央教育審議会教育課程部会のワーキンググループ(不登校児童生徒に係る特別の教育課程WG)で、配付資料1として「不登校児童生徒に係る特別の教育課程の学習評価等の方向性について」が示されました。
現状では、例えば、学校に来ることが難しく十分な学習時間を確保することができなかったり、下学年の学び直しを行ったりしているケースでは、通常の教育課程(在籍学年の教育課程)に基づく、現行の学習評価では、「1」や「−」といった評定の記載となり、そのことが児童生徒(や保護者)の学習意欲や自己肯定感を低下させるといった指摘がある。
引用:文部科学省 不登校児童生徒に係る特別の教育課程WG 第6回 資料1
文科省は2024年度の不登校小中学生が35万3,970人と過去最多になったことを受け、学びと評価の両面で制度の見直しを進めています。今回の方向性はその柱の1つです。

高野智弘
新しい学習評価の3パターン|文科省ワーキンググループ案
文科省WGの資料1では、不登校の子どもの学習評価を、以下の3つのパターンから柔軟に選べるようにする方針が示されました。
評価方法A|在籍学年と同じ目標で観点別評価
在籍学年の教育課程と同じ目標に基づいて学んでいる場合は、通常通り観点別評価と評定を行います。たとえば中学2年生が中学2年生の数学の目標で学んでいるケースが該当します。
評価方法B|下学年の評価規準で観点別評価
在籍学年の一部の目標、または下学年の目標で学んでいる場合は、下学年の評価規準を使って観点別評価と評定を行えます。中学2年生が中学1年の数学に取り組んでいる場合、中学1年生の規準で「知識・技能:A」のように評価できます。
指導要録には「数学については、中学1年の目標に基づき評価」のように記載され、どの基準で評価されたかが分かるようになります。
評価方法C|数値ではなく記述で個人内評価
独自に設定した目標で学んでいる場合や、数値・段階での評価が学習意欲をさらに下げてしまう場合は、記述による個人内評価に切り替えられます。観点別のA・B・Cや、評定の1〜5を出さず、本人の進歩や良かった点を文章で示します。

高野智弘
3つの評価方法の比較表|どれが選ばれるか
3つの評価方法と、それぞれが選ばれる場面を整理します。
| 評価方法 | 使う場面 | 評定(1〜5) | 観点別(A・B・C) | 記述評価 |
|---|---|---|---|---|
| 評価方法A | 在籍学年と同じ目標で学習 | あり | あり | 追加可 |
| 評価方法B | 下学年や一部の目標で学習 | あり (下学年規準) | あり (下学年規準) | 追加可 |
| 評価方法C | 独自の目標、数値が合わない場合 | なし | なし | 記述のみ |
ポイントは、「1」や「−」と機械的に評定する運用が見直されることです。これまで多くの保護者が悩んできた、「学校に行けないだけで通知表に1がついてしまう」という現実に、制度として歯止めがかかります。
気になる高校入試の内申書はどうなる?
不登校のお子さんがいる家庭で最も気になるのが、高校入試での調査書(内申書)です。文科省の資料1では、調査書の取扱いについても具体的な方針が示されました。
調査書での扱い|評定や記述を積極的に記載
特別の教育課程で学んだ評定や記述評価は、調査書に積極的に記載することが推奨されています。これまで「1」や「−」だけが書かれていた状態から、「下学年の規準で3」「記述による個人内評価あり」のように、努力の跡が見える内申書に変わっていく方向です。
選抜方法の多様化|学力検査重視の入試も検討
文科省は都道府県教育委員会に対して、以下の3つの方向性を示しました。
- 調査書に特別の教育課程の評価を積極的に記載し、入試で活用する
- 調査書の評価について加点を行うなど、適切に勘案する
- 調査書よりも学力検査や面接を重視する選抜方法を増やす
すでに東京都や神奈川県などでは、不登校経験者向けの「自己申告書」を提出できる入試制度があります。今後はこうした選抜方法が全国的に広がる可能性があります。
調査書を用いないことができる選抜の取扱い等について整理すべきとの方針が示されているところ。
引用:文部科学省 不登校児童生徒に係る特別の教育課程WG 第6回 資料1

高野智弘
制度を使うために保護者がやるべきこと3つ
新しい評価方法は、自動的に適用されるわけではありません。保護者が動くことで、お子さんに合った評価が選ばれやすくなります。
1|担任の先生と「指導計画」をすり合わせる
特別の教育課程は、学校長の承認を得た個別の指導計画に基づいて実施されます。計画には、目標・指導内容・評価方法が書き込まれます。担任や教科担任との面談で、「うちの子は数学はB、国語はCで進めたい」など、家庭の希望を伝えましょう。
2|校内・校外の教育支援センターを把握する
不登校の特別の教育課程は、教室ではなく校内教育支援センターや校外の教育支援センターでの指導が中心になります。日々の様子は指導員が記録し、それが評価材料として担任に共有されます。どのセンターを使うか、家庭でも把握しておきましょう。
3|進路の選択肢を早めに広げる
中学生のお子さんがいる場合、高校入試の選抜方法を1年生のうちから情報収集しておくと安心です。通信制高校、不登校特例校、自己申告書を使える公立高校など、選択肢は年々増えています。
これからの動きと家庭で備えること
文科省は今後、特別の教育課程の運用の手引きを作成し、全国の学校に展開する予定です。2027年度以降、自治体ごとに導入が広がる見込みです。
家庭でできる準備は、お子さんの「学べる場所」と「学び方」を1つに絞らないことです。学校・教育支援センター・自宅・フリースクールなど、複数の選択肢を持っておくと、評価方法も柔軟に組み合わせやすくなります。
通知表の数字に一喜一憂せず、お子さんの今日できたことを認めていく姿勢が、これからの「個別最適な学び」につながります。
不登校の自宅学習を支える教材
学校に行けない期間も、家庭での学びを止めないことが大切です。下学年の学び直しに取り組むお子さんも、独自のテーマを深めたいお子さんも、自宅で使える教材を上手に活用しましょう。
無料でダウンロードできる学年別の教材を集めたこども教材プラスでは、小学生・中学生向けの問題集や学習プリントを揃えています。下学年の学び直しにも、独自の興味を広げる課題にも使えるので、特別の教育課程の自宅学習部分の補助としてご活用ください。
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