- 文部科学省が2026年7月30日に公表した調査で、公立小中学校の体育館などの空調設置率は31.7%(2026年5月1日時点)
- 1年前の22.7%から9.0ポイント上がったが、それでも3棟に2棟にはエアコンがない
- 同じ日に公表された別の調査では、普通教室の設置率は99.6%。教室と体育館の差は68ポイント近くある
- 都道府県の差が大きく、東京都95.6%に対して佐賀県0.8%。同じ公立でも環境がまるで違う
- 国は避難所にもなる小中学校の体育館について、令和17年度(2035年度)までに設置率100%を目標に掲げている
2学期が始まったら、お子さんの学校の体育館は涼しいのでしょうか。文部科学省が2026年7月30日に公表した調査で、公立小中学校の体育館などの空調設置率は31.7%にとどまることがわかりました。教室のエアコンがほぼ行き渡った一方で、体育館は3棟に2棟が未設置のままです。全国と都道府県のデータをもとに、9月以降の学校生活に何が起きるのか、家庭で何ができるのかを整理します。
体育館のエアコン設置率は31.7%、1年で9.0ポイント上昇
文部科学省は2026年7月30日、公立学校施設の空調設備の設置状況について2つの調査結果を公表しました。1つは体育館や武道場を対象にしたもの、もう1つは普通教室や特別教室、給食調理場を対象にしたものです。いずれも2026年5月1日時点の状況をまとめています。
小中学校の体育館は31.7%、前回調査から9.0ポイント上昇
公立小中学校の体育館および武道場は全国に31,878棟あり、そのうち空調設備が設置されているのは10,099棟でした。設置率は31.7%です。前回調査(2025年5月1日時点)の22.7%から9.0ポイント上がりました。調査が始まった2017年4月時点は1.2%でしたから、この1年の伸びは過去で最も大きくなっています。
学校種別に見ると、小学校の体育館は17,840棟のうち5,610棟で31.4%、中学校の体育館・武道場は14,038棟のうち4,489棟で32.0%でした。中学校のほうがわずかに高い水準です。特別支援学校の体育館は1,072棟のうち614棟が設置済みで57.3%、幼稚園の体育館は1,172棟のうち1,052棟で89.8%と、学校種によって大きく開きがあります。
いっぽう高等学校の体育館等は7,989棟のうち1,970棟で24.7%と、小中学校よりも低い水準にとどまりました。ただし前回の14.0%からは10.7ポイント上がっており、伸び幅そのものは全学校種のなかで最も大きくなっています。
普通教室は99.6%、置き去りにされてきた体育館
同じ日に公表された教室の調査では、公立小中学校の普通教室380,623室のうち378,955室に空調があり、設置率は99.6%でした。前回の99.1%からさらに上がり、教室のエアコンはほぼ全国に行き渡ったといえます。
見落とされがちなのが特別教室です。理科室や音楽室、図工室などを含む特別教室は346,054室のうち251,354室で、設置率は72.6%にとどまります。前回の66.9%から5.7ポイント上がりましたが、いまも4室に1室以上にエアコンがありません。給食調理場の調理室等については、単独調理場が91.0%、共同調理場が93.5%でした。学校のなかで空調がどこまで整っているかは、部屋の種類でまったく違います。
エアコンの整備は、子どもが1日の大半を過ごす普通教室から順に進んできました。体育館が後回しになったのは、面積が広く天井が高いぶん設備が大がかりになるためです。ただ、その体育館で全校集会も体育の授業も部活動も行われます。
高野智弘
体育館にエアコンがない理由と、都道府県で94.8ポイントの差
全国平均の31.7%という数字は、地域ごとの大きなばらつきをならしたものです。都道府県別のデータを見ると、同じ公立小中学校でも環境がまったく違うことがわかります。
東京都95.6%、佐賀県0.8%という開き
設置率が最も高いのは東京都の95.6%で、体育館・武道場2,120棟のうち2,027棟に空調が入っています。次いで大阪府61.8%、兵庫県56.9%と続きます。いっぽう最も低いのは佐賀県の0.8%で、265棟のうち設置済みは2棟でした。
| 順位 | 設置率が高い都道府県 | 設置率が低い都道府県 |
|---|---|---|
| 1 | 東京都 95.6% | 佐賀県 0.8% |
| 2 | 大阪府 61.8% | 鹿児島県 1.3% |
| 3 | 兵庫県 56.9% | 長崎県 1.4% |
| 4 | 栃木県 52.8% | 沖縄県 1.9% |
| 5 | 山形県 52.0% | 秋田県 4.9% |
上位と下位で94.8ポイントの開きがあります。目を引くのは、夏の暑さが厳しい地域が必ずしも上位に来ていない点です。沖縄県は1.9%、鹿児島県は1.3%で、いずれも下位に並んでいます。設置の進み方は気温よりも、自治体の財政状況や整備計画の優先順位に左右されているようです。
エアコンを入れても、断熱がなければ効きにくい
体育館の空調が進まない背景には、設備そのものの費用だけでなく、建物の構造という問題があります。文部科学省は同じ調査のなかで、体育館等の断熱の状況も公表しました。
公立小中学校の体育館・武道場31,878棟のうち、断熱が施されているのは8,882棟で27.9%です。7割以上の体育館は、屋根や壁から熱が入りやすい状態です。都道府県別では東京都が48.7%と最も高く、佐賀県は1.5%、島根県3.5%、大分県4.4%と続きます。
断熱されていない建物にエアコンを設置すると、冷えにくいうえに電気代が膨らみます。空調と断熱をセットで進める必要があり、それが工期と費用を押し上げます。体育館にエアコンがない理由を1つに絞ることはできませんが、広さ・天井の高さ・断熱の不足という3つが重なっているのが実情です。
災害時の協定を含めると確保率は39.9%
もう1つ、この調査には「協定等を含む確保率」という項目があります。すでに設置されている棟に加えて、未設置でも災害時の調達協定などによって外部から空調設備を確保できる棟を合わせた割合です。全国では39.9%でした。
設置率31.7%との差である8.2ポイント分は、平常時にはエアコンがないものの、災害が起きたときにはリース機器などで冷房を用意する見込みがある体育館ということになります。裏を返せば、ふだんの体育の授業や部活動では使えません。
2学期の体育・部活・行事に何が起きるか
数字の話が続きましたが、保護者にとって大切なのは9月からの学校生活がどうなるかです。ここからは、体育館の暑さが子どもにどう影響するかを見ていきます。
校舎内の熱中症の6割は体育館で起きている
日本スポーツ振興センターは、災害共済給付を行った熱中症のデータを公表しています。2020年度から2024年度までの5年間で、学校の管理下で医療費の給付対象となった熱中症は、小学校1,771件、中学校6,086件でした。
このうち校舎内で起きたものを場所別に見ると、小学校では547件中205件、中学校では1,491件中1,055件が体育館・屋内運動場でした。小中学校を合わせると校舎内2,038件のうち1,260件、およそ61.8%が体育館で起きている計算になります。教室にエアコンが行き渡ったいま、校舎のなかで熱中症が起きる場所は体育館に偏っています。
暑さ指数31以上は「運動は原則中止」
学校での運動の可否は、気温そのものではなく暑さ指数(WBGT)を目安に判断されます。気温に湿度と輻射熱を加えて算出する指標で、気温と区別するため単位をつけずに表記します。環境省が示す熱中症予防運動指針では、次のように定められています。
運動は原則中止 特別の場合以外は運動を中止する。特に子どもの場合には中止すべき。
引用:環境省熱中症予防情報サイト「暑さ指数(WBGT)について」(暑さ指数31以上の区分。公益財団法人日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」2019より)
暑さ指数31以上は、気温でいえばおおむね35℃以上にあたります。28以上31未満は「厳重警戒」で、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避けることとされています。空調のない体育館は、締め切れば熱がこもり、窓を開ければ外気が入ります。屋外より涼しいとは限りません。9月に入っても暑さ指数が下がらない日は、体育や部活動が中止や短縮になる可能性があります。
運動する機会が減ること自体も、子どもの体には影響します。子どもの体力・運動能力調査の結果でも、運動する子としない子の二極化が課題として挙げられています。
避難所としての体育館は33.1%
体育館は災害時の避難所にもなります。避難所に指定されている学校の体育館等29,213棟のうち、空調があるのは9,683棟で33.1%でした。前回の23.7%から9.4ポイント上がっています。
文部科学省は今後の対応について、次のように示しています。
令和7年6月に閣議決定した「第1次国土強靱化実施中期計画」では、避難所等にもなる公立小中学校の体育館等の空調設備の設置率については、令和17年度までに100%にする目標を掲げているところです。
引用:文部科学省「公立学校施設の体育館等の空調(冷房)設備の設置状況について」(令和8年7月30日)
令和17年度は2035年度にあたります。いま小学1年生のお子さんが、中学校を卒業するころの話です。
高野智弘
保護者が今できる3つのこと
設置率が上がるのを待つあいだにも、2学期は始まります。家庭でできることを3つに整理しました。
1. 自分の学校の設置状況を調べる
今回の調査は都道府県単位までの公表で、学校ごとの一覧はありません。個別の学校の状況を知るには、市区町村の教育委員会が公開している学校施設整備計画や長寿命化計画を見るのが近道です。「(自治体名) 学校施設 長寿命化計画」で検索すると、空調整備のスケジュールが載っていることがあります。
わからない場合は、9月の保護者会や個人面談で担任の先生に聞いてみてください。体育館に空調があるか、ない場合は暑さ指数をどう測って活動の可否を判断しているかの2点が、確認しておきたいところです。
2. 2学期の持ち物と体調管理を見直す
9月は運動会や体育祭の練習が始まる時期でもあります。学校の管理下で起きた熱中症を場合別に見ると、小学校では運動会・体育祭に関連するものが5年間で113件ありました。
1日分として足りる容量の水筒に替える、経口補水液や塩分タブレットの持参が認められているか学校に確認する、朝食を抜かせないといった基本の積み重ねが効きます。前の晩の睡眠不足も熱中症のリスクを上げます。夏休みのあいだに崩れた生活リズムは、2学期が始まる数日前から戻しておきたいところです。夏休み中の学校開放を利用しているご家庭は、その終わりに合わせて調整すると無理がありません。
3. 涼しくない場所を子どもと共有しておく
体育館だけでなく、理科室や音楽室、廊下や昇降口にもエアコンはありません。小学校で校舎内に起きた熱中症547件のうち、廊下が23件、昇降口・玄関が12件を占めています。移動のあいだも暑いのだと、お子さんと話しておくだけで行動が変わります。
体調が悪くなったときに我慢せず先生に伝えること、友達の様子がおかしいときに大人を呼ぶこと。この2つを2学期の始まる前に確認しておくと、いざというときに間に合います。なお給食室については調理室等の空調設置率が91.0%まで進んでおり、給食の現場の環境は改善が進んでいる分野です。
高野智弘
よくある質問
体育館のエアコンはいつから全部の学校に付きますか?
体育館にエアコンがない理由は何ですか?
体育館にエアコンがある学校とない学校で、授業に差は出ますか?
暑さの情報は、届く場所に置いておく
体育館のエアコン設置率31.7%という数字は、1年で9.0ポイント上がった前進の記録でもあり、3棟に2棟がまだ暑いままだという現実の記録でもあります。どちらの面も、お子さんが通う学校がどちらに属するかで意味が変わります。
教育Timesでは、文部科学省やこども家庭庁の発表を保護者の生活に引き寄せて届けています。2学期が始まる前に、学校の暑さ対策についてご家庭で一度話し合ってみてください。ご意見やご質問は運営会社のお問い合わせ窓口までお寄せください。
