子育て

夏休み明けの不登校と自殺|9月は62人で最多、政府が初の集中期間

このニュースを1分で解説
  • 政府が8月20日から9月9日を、初めて「こども・若者の自殺対策集中取組期間」に定めました
  • 令和7年の小中高生の自殺者数は538人で過去最多。月別では9月の62人が最も多い数字です
  • 日別に見ると8月後半から増え、9月1日に多くなる傾向が続いています
  • 北海道・東北は他の地域より2週間ほど早く増えます。夏休み明けが1〜2週間早いためです
  • 原因・動機は学校問題が21件減る一方、家庭問題が39件増えました

夏休みが終わりに近づくころ、お子さんの口数が減ったり、朝起きるのがつらそうに見えたりしていませんか。政府は2026年8月7日、8月20日から9月9日までを初めて「こども・若者の自殺対策集中取組期間」に定めると発表しました。令和7年の小中高生の自殺者数は538人と過去最多で、月別に見ると9月の62人が最も多くなっています。夏休み明けに不登校や登校しぶりが増えるのはなぜなのか、公表された月別・日別のデータをたどりながら、家庭でできる見守りまで整理します。

政府が初の「集中取組期間」、8月20日から9月9日まで

こども家庭庁は2026年8月7日、厚生労働省・文部科学省・内閣府孤独・孤立対策推進室と連携し、こども・若者の自殺防止に向けた啓発活動を8月から強化すると発表しました。

こどもや若者の自殺が長期休暇明け前後に増加する傾向を踏まえて、こども・若者の自殺防止に向けた取組を強化し、集中的な啓発活動を実施します。小中高生の自殺者数は、近年増加傾向が続き、令和7年の小中高生の自殺者数は過去最多の538人となり、極めて深刻な状況が続いています。
引用:こども家庭庁「政府全体でこども・若者の自殺防止に向けた取組を強化します」(2026年8月7日)

注目したいのは、こども家庭庁が8月20日から9月9日までを「こども・若者の自殺対策集中取組期間」として新たに設定したことです。この期間の設定は今回が初めてになります。土台にあるのは、2026年4月30日に公表された「『こどもの命と安全を徹底的に守る』大臣プロジェクト2026」の第1弾「こども・若者 自殺防止総力戦略」です。

4省庁がそれぞれ担当を分けて動く

今回の取組は、4つの省庁が役割を分けて同時に動く形になっています。保護者の目に触れる可能性が高いものを整理しました。

省庁主な取組時期
こども家庭庁集中取組期間の設定、相談窓口カード・ステッカー・電子ポスターの配布、大臣メッセージ動画、大人向けゲートキーパー啓発動画8月20日〜9月9日
厚生労働省「まもろうよこころ」の周知、YouTube・SNS・音楽配信アプリでの広告、駅舎などへのポスター掲示8月3日以降/屋外ビジョンは9月10日〜16日
文部科学省YouTube動画広告、公式SNSでの窓口案内、教育委員会・学校への通知と依頼通知は7月3日、依頼は8月5日
内閣府孤独・孤立対策推進室「あなたはひとりじゃない」18歳以下向けページの周知、相談ダイヤル(#9999)・チャット・メールの窓口開設8月末〜9月冒頭
出典:こども家庭庁「政府全体でこども・若者の自殺防止に向けた取組を強化します」(2026年8月7日)をもとに作成

表からわかるのは、9月上旬に向けて段階的に山を作る設計になっている点です。厚生労働省の「自殺予防週間」が9月10日から16日なので、こども家庭庁の集中取組期間(9日まで)と切れ目なくつながります。

背景にある改正自殺対策基本法の全面施行

もう1つ押さえておきたいのが法律の動きです。改正自殺対策基本法が2026年4月1日に全面施行され、基本理念として、こどもに係る自殺対策を社会全体で取り組むことが明記されました。国が旗を振るだけでなく、学校や地域、家庭を含めて取り組む枠組みに変わったわけです。

年間の数字がどう推移してきたかは、子どもの自殺が538人で過去最多になった背景で詳しくまとめています。

令和7年は9月の62人が最多。月別データが示す山

ここからは、文部科学省が学校向けの通知に添えた資料の数字を見ていきます。令和7年の小中高生の自殺者数を月別に並べると、山がどこにあるかがはっきりします。

令和7年 月別の自殺者数

1月 51人

2月 36人

3月 36人

4月 33人

5月 47人

6月 43人

7月 48人

8月 45人

9月 62人

10月 52人

11月 50人

12月 35人

出典:厚生労働省自殺対策推進室(令和7年確定値)

9月が62人で最も多く、10月の52人、1月の51人が続きます。最も少ない4月の33人と比べると、9月はおよそ1.9倍です。令和6年も9月の59人が最多だったので、直近2年続けて9月が年間で最も多い月になりました。

中学生は9月が前年から69.2%増えた

学年別に分けると、変化がはっきり出たのは中学生です。令和6年9月の13人に対し、令和7年9月は22人。9人増、率にして69.2%の増加です。8月も10人から16人(60.0%増)、10月も12人から20人(66.7%増)と、8月から10月にかけて前年を大きく上回りました。

高野智弘
高野智弘
「9月が最多」と聞くと9月1日だけを身構えてしまいますが、数字を見ると8月の45人もけっして小さくありません。山は9月に突然できるのではなく、8月の後半から少しずつ盛り上がっていきます。始業式の日を特別視するより、お盆が明けたころから普段どおりに接する時間を確保しておくほうが、お子さんにとっては支えになりやすいと感じています。

学年別で減ったのは小学生だけ

年間の合計でも同じ傾向が出ています。令和6年から令和7年にかけて、小学生は15人から10人へ5人減った一方、中学生は163人から172人へ9人、高校生は351人から356人へ5人増えました。男女別では男性が3年ぶりに増えて258人、女性は3年ぶりに減って280人となり、前年に続いて女性が男性を上回っています。

8月後半から増え、9月1日に集中する

なぜこの時期なのか。文部科学省は2026年7月3日に全国の教育委員会へ出した通知で、日別のデータをもとにこう説明しています。

児童生徒の自殺は、平成21年以降の児童生徒の自殺者数を日別でみると、8月後半から増加し、特に長期休業明けの9月1日に多くなる傾向にあります。
引用:文部科学省「児童生徒の自殺予防に係る取組について(通知)」(2026年7月3日)

長い休みのあいだは、学校の人間関係や勉強のプレッシャーからいったん離れられます。その状態から一気に日常へ戻る場面で、負担が集中しやすくなるわけです。同じ理由で、夏休み明けは不登校や登校しぶりが表に出やすい時期でもあります。学校を休みはじめるきっかけがどこにあるのかは、不登校の原因ランキングと小中の違いにまとめています。

北海道・東北は他地域より2週間早い

見落とされがちですが、この山が来る時期には地域差があります。通知の別添資料には次の記載があります。

地域別にみると、「北海道・東北」の自殺者数が特に増加する時期は、「その他地域」よりも2週間ほど早い。北海道・東北地方については、夏休み明けが1~2週間早い傾向にあることと関連があると考えられる。
引用:文部科学省「児童生徒の自殺予防に係る取組について(通知)」別添資料2(令和6年版自殺対策白書より)

北海道や東北にお住まいなら、気をつける時期は8月中旬から下旬にずれると考えてください。全国ニュースが「9月1日」と繰り返すころには、地域の山はすでに過ぎていることになります。

原因は学校問題が減り、家庭問題が39件増えた

もう1つ、令和7年のデータで動きが大きかったのが原因・動機です。

原因・動機令和6年令和7年増減
健康問題164件174件+10
家庭問題108件147件+39
学校問題272件251件−21
 うち いじめ9件16件+7
 うち 学業不振65件58件−7
交際問題44件54件+10
出典:警察庁自殺統計原票データより厚生労働省自殺対策推進室作成(令和8年3月27日現在)。原因・動機は1人につき複数計上されるため、件数の合計は自殺者数と一致しません

表で目を引くのは、学校問題が21件減っているのに家庭問題が39件増えている点です。学校の外にも要因が広がっていることを示す数字と読めます。また、いじめは9件から16件へとおよそ1.8倍になりました。学校問題251件の内訳では、学業不振58件・入試に関する悩み28件・進路に関する悩み55件を合わせた141件が、およそ6割を占めています。

高野智弘
高野智弘
家庭問題が39件増えたという数字は、保護者にとって重く響くかもしれません。ただ、これは「家庭が悪い」という意味ではなく、学校に相談しても解決しない悩みが増えている、と読むほうが実態に近いと思います。進路や成績の話をする時期でもあるので、この夏は「どうするの」と結論を急がず、まず今の気持ちを聞く場面を1回でも多く作っていただきたいです。

夏休み明けの前に、家庭でできること

文部科学省は今回の通知で、保護者に対して長期休業中の見守りを促すよう学校に求めています。家庭の側で構えておけることを3つに絞りました。

生活リズムより先に、話せる時間をつくる

夏休みの終盤は、宿題の進み具合や起床時間が気になる時期です。ただ、朝起きられないことを責める会話が増えるほど、お子さんは本当に困っていることを言い出しにくくなります。生活リズムの調整は必要ですが、それとは別に、テレビもスマホも見ない15分をつくって、勉強以外の話をする時間を確保してみてください。

「学校に行きたくない」と言われたときに

夏休み明けに「行きたくない」と口にするのは、めずらしいことではありません。その場で理由を問い詰めたり、すぐに励ましたりする前に、まず「話してくれてありがとう」と受け止めるところから始めてください。1日休ませることが問題を長引かせるとは限らず、休んだ日に何があったかを一緒に整理できると、次の一歩が見えてきます。数日以上続くようなら、担任やスクールカウンセラーに早めに共有するほうが選択肢は広がります。

相談先はお子さんと一緒に開いておく

窓口は「知っている」だけでは使われません。文部科学省も通知のなかで、長期休業前に端末を実際に操作させて相談の手順を確認させるよう学校に求めています。家庭でも同じで、番号を一度一緒に画面に出しておくと、いざというときの心理的なハードルが下がります。

窓口連絡先特徴
24時間子供SOSダイヤル(文部科学省)0120-0-7831024時間・通話無料。お子さん本人も保護者もかけられます
まもろうよこころ(厚生労働省)専用サイト電話・SNS・チャットの相談先を一覧で確認できます
あなたはひとりじゃない(内閣府)#9999 ほか18歳以下向けページあり。8月末〜9月冒頭にチャット・メール窓口を開設予定
出典:こども家庭庁・文部科学省・厚生労働省の各公表資料(2026年8月時点)をもとに作成

厚生労働省の相談窓口一覧はまもろうよこころから確認できます。夏休み中の居場所づくりや食の支援については、夏休みの子どもの居場所と食支援、学校開放の取り組みもあわせてご覧ください。

高野智弘
高野智弘
こども家庭庁が今年つくったカードは名刺サイズ(91×55mm)で、財布にも入ります。商業施設などで配布されるので、見かけたら1枚もらって、お子さんの筆箱に入れておくのもいい方法です。同じページには大人向けのゲートキーパー啓発動画も公開されています。声をかける側の心得を扱った内容ですから、始業式の前に一度目を通しておくと、いざというときに落ち着いて構えられます。

よくある質問

「こども・若者の自殺対策集中取組期間」はいつからいつまでですか?
2026年8月20日から9月9日までです。こども家庭庁が今回初めて設定しました。続けて9月10日から16日が厚生労働省の「自殺予防週間」にあたるため、8月下旬から9月中旬まで途切れずに啓発が行われます。
夏休み明けの不登校は、どのくらいの期間で落ち着きますか?
一律の目安はありません。数日で戻るお子さんもいれば、2学期を通して断続的に休む場合もあります。国の統計では日別の自殺者数が8月後半から9月1日にかけて増えるとされており、この時期は特に慎重な見守りが必要です。欠席が続くときは、無理に登校を促すより先に担任やスクールカウンセラーへ状況を共有し、出席の扱いや学習の進め方を確認しておくと選択肢が増えます。
「学校に行きたくない」と言われたら、休ませてもよいのでしょうか?
1日休ませること自体が問題になるとは限りません。まず理由を問い詰めずに受け止め、体調や気分を確かめてください。そのうえで、休んでいる時間に何を感じているかを聞き取り、学校とも共有しておくことが大切です。眠れない、食べられない、死にたいという言葉が出るといった変化があるときは、24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)などの窓口も使いながら、早めに専門家へつないでください。

始業式の前に、1つだけ決めておく

政府が8月20日から9月9日を集中取組期間に定めたのは、この3週間がお子さんにとって特に苦しい時期だと、統計がはっきり示しているからです。令和7年は9月の62人が年間で最も多く、8月後半からその山は始まっています。

家庭でできることは大掛かりでなくて構いません。相談窓口を1つ、お子さんと一緒に画面に出しておく。それだけでも、いざというときの距離は縮まります。北海道・東北にお住まいなら、その1つを今週のうちに済ませておくと安心です。

高野智弘

この記事を書いた人:高野智弘
株式会社SUNCORE代表。教育メディア「教育Times」を運営し、文部科学省・こども家庭庁の公式発表をもとに、保護者向けの教育ニュース解説を発信している。
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