学校・制度

次期学習指導要領はいつから?中学に情報・技術科、2031年度全面実施

このニュースを1分で解説
  • 中学校に新しい教科「情報・技術科」が生まれます。今の技術・家庭科の技術分野を作り替えるかたちです
  • 小学校は総合的な学習の時間に「情報の領域」が加わり、高校は情報ⅡにAIの内容が入ります
  • 全面実施は小学校が2030年度、中学校が2031年度。高校は2032年度の入学生からです
  • 年間の授業時間は増やさない方針のため、他の教科の内容が絞り込まれます
  • 技術を担当する先生9,649人のうち2,406人が正規の免許を持たずに教えている実態も示されました

「中学校に新しい教科ができる」と聞いて、うちの子は関係あるのだろうかと気になった方も多いのではないでしょうか。文部科学省の専門部会は2026年7月30日、中学校に「情報・技術科」を創設し、小学校の総合的な学習の時間に「情報の領域」を加える取りまとめ案を公表しました。全面実施は小学校が2030年度、中学校が2031年度です。何がどう変わるのか、今のお子さんの学年だと何年生から新しい教科書になるのか、公表された資料をたどって整理します。

中学に新教科「情報・技術科」、小学校の総合には「情報の領域」

中央教育審議会の教育課程部会に置かれた情報・技術ワーキンググループは、2026年7月30日の第12回会合で取りまとめ案を示しました。次に改訂される学習指導要領で、小学校から高校までの情報教育をどう作り直すかを1年近く議論してきた部会です。

今回の柱は3つあります。小学校の総合的な学習の時間に「情報の領域」を加えること、中学校に「情報・技術科」を創設すること、高校の情報科を充実させることです。

「情報技術」と「情報を基盤とした生産技術」の2領域に

中学校の「情報・技術科」は、今の技術・家庭科の技術分野を再編して作られます。現行の技術分野は「A材料と加工の技術」「B生物育成の技術」「Cエネルギー変換の技術」「D情報の技術」という4つの内容で構成され、情報はそのうちの1つでした。

新しい教科では、この情報が独立した領域に格上げされます。取りまとめ案では「情報技術」領域と「情報を基盤とした生産技術」領域の2領域構成とし、合わせて7つの内容項目を置くと整理されました。

領域内容項目(いずれも仮称)
情報技術情報の表現とデジタル化/プログラミングと自動化/情報基盤とシステム化
情報を基盤とした生産技術材料加工とデジタル製作/生物育成とデータ活用/エネルギー変換とスマート化/技術の統合
出典:文部科学省「情報・技術WG取りまとめ(案)について」(2026年7月30日)をもとに作成

表を見ると、これまでの木工や栽培といった学習がなくなるわけではないことがわかります。材料加工や生物育成は残したうえで、3Dプリンターやセンシングデータ、シミュレータの活用を組み合わせ、情報技術と結びつけて学ぶ形に変わります。教科名が「情報技術科」ではなく「情報・技術科」になったのも、情報だけの教科ではないという意味を込めたためだと資料に説明があります。

高野智弘
高野智弘
「新しい教科ができる」と聞くと身構えてしまいますが、中身を読むと、技術科がなくなって情報の授業に置き換わるわけではありません。木材加工や栽培の学習は残り、そこに3Dプリンターやデータの活用が乗ってくるイメージです。塾や教材を今すぐ探す話ではないので、まずは落ち着いて構えていて大丈夫です。

小学校の総合は「探究の領域」と「情報の領域」に分かれる

小学校では新しい教科は作られません。代わりに、総合的な学習の時間を「探究の領域」と「情報の領域」の2つに分ける整理がされました。

情報の領域では、探究の流れのなかで情報技術を使う「ミニ探究ユニット」と、基礎的な内容だけを取り出して学ぶ「情報ブロック」を組み合わせます。パソコンの使い方だけを切り離して教えるのではなく、調べたりまとめたりする活動と一体で扱う設計です。

現行の学習指導要領では、小学校の情報教育は教科としての位置づけがなく、授業時数も指導内容も具体的に示されていませんでした。そのため地域や学校による差が大きいことが課題として挙げられており、今回の整理はその差を埋める狙いがあります。

高校は情報Ⅰを残し、情報ⅡにAIの内容を新設

高校については、共通必履修の情報Ⅰをそのまま残す方針が示されました。情報Ⅰが必履修になったのは前回の改訂で、大学入学共通テストに加わったのが2025年度です。ここで科目構成を大きく動かすと現場が混乱するという判断です。

選択科目の情報Ⅱには「AI」が内容項目として新たに置かれ、「社会課題とデータサイエンス」「コンテンツデザイン」「先端技術と情報システムデザイン」などと並びます。単位数を学校の判断で柔軟に配当できるようにする案も示されました。

次期学習指導要領はいつから?全面実施と先行実施の年度

保護者にとって一番知りたいのは、うちの子が対象になるのかどうかだと思います。取りまとめ案には実施時期の見通しが記されています。

学校種先行実施(経過措置)全面実施
小学校2028年度から段階的2030年度
中学校2029年度から段階的2031年度
高等学校2032年度の入学生から順次
出典:文部科学省「情報・技術WG取りまとめ(案)について」(2026年7月30日)。今後変更の可能性があります

表からわかるのは、全面実施を待たずに一部の内容が先に始まるという点です。取りまとめ案は、社会の変化が先に進むなかで全面実施まで待つと必要な力の育成が遅れるとして、小学校は2028年度から、中学校は2029年度から段階的に先行実施する経過措置を検討するのが適当だとしています。前回の改訂でも、小学校の外国語活動が全面実施の2年前から先に始まった例があります。

今のお子さんは何年生から新しい教科書になるのか

実施年度を学年に置き換えると、次のようになります。2026年度の学年で見た目安です。

2026年度の学年新しい内容を学ぶ時期の目安
3歳(年少)2030年度に小学1年。小学校の6年間をすべて新しい内容で学ぶ
小学2年生小学6年で「情報の領域」、中学1年から「情報・技術科」を3年間
小学4年生中学2年から新課程、高校は入学時(2032年度)から新課程
小学6年生中学・高校とも現行の学習指導要領のまま卒業する見込み
文部科学省が示した実施年度をもとに教育Timesで作成。先行実施により前倒しで学ぶ内容もあります

中学校の「情報・技術科」を1年生から3年間通して学ぶ最初の学年は、2026年度に小学2年生のお子さんです。今の小学6年生は、中学・高校とも現行の指導要領のまま卒業する見通しになります。

高野智弘
高野智弘
高校受験を控えたご家庭は「入試が変わるのでは」と心配になるかもしれませんが、今の中学生は現行の指導要領のまま受験します。入試の出題が新しい内容に切り替わるのは、新課程で学んだ学年が受験する年からです。中学入試・高校入試ともに、慌てて対策を変える必要はありません。

年間の授業時間は増えない。だから他の教科が絞り込まれる

新しい教科ができるなら授業時間はどうなるのか。ここは多くの保護者が気にする点です。

取りまとめ案は、年間の標準総授業時数を増加させないことを前提に検討すると明記しています。つまり、新しい教科の時間はどこかから捻出することになります。

参考として示された学習活動の項目数は、小学3年で28項目程度、小学4年で27項目程度、小学5年で31項目程度、小学6年で30項目程度、中学1年で65項目程度、中学2年で66項目程度、中学3年で32項目程度でした。中学1・2年に厚く、3年で軽くなる配分です。ただしこの数字は規模感をつかむための目安で、具体的な時間数は今後決まります。

授業時間を増やさずに新しい内容を入れるため、取りまとめ案は各教科で個別に扱ってきたタイピングやプログラミング、データ活用を新教科に集約し、各教科はその分だけ教科固有の学びに集中できるようにする、という考え方を示しています。学習内容が単純に増えるわけではない点は、押さえておきたいところです。

情報・技術科を教える先生が足りていない

取りまとめ案でもう1つ目を引くのが、指導体制の記述です。新しい教科を作っても、教える人がいなければ絵に描いた餅になります。

(※)令和7年度時点で、中学校技術・家庭科(技術分野)の担当教員のうち、臨時免許状所有者は543名、免許外教科担任は1,863名、高等学校情報科の担当教員のうち、臨時免許状所有者は47名、免許外教科担任は97名と十分に指導体制が整備されていない危機的な課題があり、改善を一層加速させる必要がある。
引用:文部科学省「情報・技術WG取りまとめ(案)について」(2026年7月30日)

国の資料が「危機的な課題」という言葉を使うのは、それほど多くありません。

技術担当の先生の4人に1人が普通免許を持っていない

2025年度時点で、中学校で技術を担当している先生は9,649人です。そのうち普通免許状を持っているのは7,243人で、残りは臨時免許状の543人と免許外教科担任の1,863人でした。合わせて2,406人、割合にすると約25%になります。

免許外教科担任とは、その教科の免許を持たない先生が、許可を受けて臨時にその教科を教える仕組みです。違法な状態ではありませんが、専門的に学んでいない先生が担当している教室があるという意味になります。

背景には教員の年齢構成もあります。2022年度時点で50代の先生が占める割合は、国語・数学・理科・社会・英語の平均が24.1%なのに対し、技術科は36.9%でした。退職が近い層が厚く、補充も追いついていません。技術の免許を取得できる大学は67校で、教員養成を行う大学およそ600校のうち一部にとどまります。

国は2028年度までに「ゼロ」を目標に掲げた

同じ日に更新された「情報活用能力の抜本的向上を支える指導体制改善プラン」では、2028年度までに中学校技術分野と高校情報科の臨時免許状所有者・免許外教科担任をゼロにする目標が示されました。

中学技術科の免許外担当 2025年度(現状) 2,406人 2026年度 1,604人 2027年度 802人 2028年度(目標) 0人 出典:文科省 指導体制改善プラン(2026年7月)

目標に近づけるため、国は免許法認定講習をオンラインで大規模に実施しています。最短1年で中学校技術科の2種免許に必要な13単位を履修でき、受講料は無料、実習だけ対面という設計です。2026年度は656名が受講予定と示されました(2026年7月23日時点)。社会人が教員免許を取る道筋については教員免許を社会人が最短で取得する方法も参考になります。

高野智弘
高野智弘
2,406人を3年でゼロにする計画は、正直に言えばかなり急な角度です。年間656名の受講だけでは届かない計算になるため、外部人材の活用や複数校での掛け持ち指導も同時に進める前提になっています。お住まいの地域で技術の授業がどう行われているかは、学校公開や懇談会で聞いてみると実感がつかめます。

保護者が今から家庭でできる3つの準備

制度が動くのは数年先ですが、家庭でできることは今日からあります。特別な教材を買う必要はありません。

タイピングと調べる力を、日常のなかで積む

新しい教科では、タイピングなどの基本操作を各教科でばらばらに教えるのをやめ、新教科に集約する方針が示されています。裏を返せば、入学前や低学年のうちに端末に慣れている子ほど負担が軽くなります。

学校から配られた端末で調べものをする、家族の予定表を一緒に作る。この程度の習慣で十分です。あわせて、調べた情報が正しいかどうかを確かめる声かけを添えてください。取りまとめ案では、偽情報や生成AIのリスクを見極める「メディアリテラシー」が情報モラルと並ぶ柱として位置づけられました。子どもの生成AI利用の実態を知っておくと、家庭でのルール作りがしやすくなります。

デジタル教科書の動きとあわせて見ておく

情報教育の見直しは単独で進んでいるわけではありません。デジタル教科書の本格導入も2030年度をめどに動いており、時間軸がほぼ重なります。学校のICT環境がどう整うかは、新しい教科がうまく回るかどうかに直結します。デジタル教科書はいつから導入されるのかを押さえておくと、学校からの案内も理解しやすくなります。

なお今回の取りまとめ案はあくまで案の段階です。この後、教育課程部会での審議まとめとパブリックコメントを経て、2026年度中に中央教育審議会の答申がまとめられる予定です。内容項目の名称も現時点では仮称で、変わる可能性があります。

よくある質問

情報・技術科はいつから始まりますか?
中学校での全面実施は2031年度です。ただし2029年度から段階的に先行実施する経過措置が検討されており、一部の内容はそれより早く始まる見込みです。小学校の「情報の領域」は2030年度全面実施、先行実施は2028年度からとされています。いずれも今後変更される可能性があります。
技術・家庭科はなくなるのですか?
なくなりません。技術・家庭科のうち技術分野が「情報・技術科」に再編される整理です。木材加工や栽培、エネルギー変換といった学習は「情報を基盤とした生産技術」領域として残り、3Dプリンターやデータ活用と組み合わせて扱われます。家庭分野は今回の取りまとめの対象に含まれていません。
授業時間が増えて子どもの負担は重くなりませんか?
年間の標準総授業時数を増やさない方針が前提とされています。新しい教科の時間は、各教科で個別に扱ってきたタイピングやプログラミング、データ活用を新教科に集約することで生み出す考え方です。具体的な時間数は教育課程企画特別部会などで今後決まります。

今の小学2年生が、最初の学年になる

中学校に「情報・技術科」ができる。この一文だけでは遠い話に聞こえますが、年度を学年に置き換えると景色が変わります。2026年度に小学2年生のお子さんが、1年生から3年間この教科を学ぶ最初の学年です。

今日できることは、端末に触れる時間を少し増やし、調べたことを鵜呑みにしない声かけを添えるくらいで構いません。制度の詳細は2026年度中の答申を待つことになります。学校からの案内が届いたときに慌てないよう、実施年度だけ頭の片隅に置いておいてください。

高野智弘

この記事を書いた人:高野智弘
株式会社SUNCORE代表。教育メディア「教育Times」を運営し、文部科学省・こども家庭庁の公式発表をもとに、保護者向けの教育ニュース解説を発信している。
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