- 文部科学省と国立教育政策研究所が2026年8月3日、全国学力テストの分析結果を公表しました
- 平日に1日3時間以上SNSや動画を見る子は小6で37.3%、中3で49.1%です
- 視聴時間が長いほど正答率は低く、中3数学では20.9ポイントの開きがありました
- ただしスマートフォン等を持っていない子が最上位ではありません。中3数学では2〜3時間見る子より低い結果です
- 文科省が示した方向は「取り上げる」ではなく、受け身の利用から能動的な活用へ切り替えることでした
夏休みに入ってから、お子さんが動画を見ている時間が気になってはいませんか。文部科学省と国立教育政策研究所は2026年8月3日、全国学力テストの分析結果を公表し、平日に3時間以上SNSや動画を見る中学3年生が49.1%にのぼると明らかにしました。視聴時間が長い子ほど正答率は低くなっています。ただしデータをよく読むと、「スマホを取り上げれば成績が上がる」とは書かれていません。約180万人が参加した調査の中身を整理します。
全国学力テスト2026、8月3日に公表されたのは「分析結果」
全国学力・学習状況調査、いわゆる全国学力テストは、2026年4月20日から5月29日にかけて実施されました。対象は小学校6年生と中学校3年生です。教科は国語と算数・数学、中学校ではこれに英語が加わります。
今年の結果は3回に分けて公表されます。1回目は7月16日で、全国平均の正答率が出ました。2回目が8月3日の分析結果で、質問調査と正答率を組み合わせた中身がここで初めて公開されます。3回目の都道府県別・政令市別のデータは秋頃の予定です。
約180万人が参加、集計率は小学校99.0%
調査の対象となったのは小学6年生1,010,714人、中学3年生1,048,039人でした。実際に集計された人数は小学校934,973人、中学校865,360人です。学校数でみると小学校は18,271校が集計対象となり、対象校の99.0%にあたります。中学校は9,430校で93.1%でした。私立の参加率が低いため、中学校の数字がやや下がります。
| 教科 | 平均正答率 | 平均正答数 |
|---|---|---|
| 小学校 国語 | 61.1% | 7.9問/13問 |
| 小学校 算数 | 56.6% | 9.1問/16問 |
| 中学校 国語 | 64.2% | 9.6問/15問 |
| 中学校 数学 | 57.4% | 9.2問/16問 |
| 中学校 英語 | IRTスコア 499 | 4技能を統合したスコア |
中学校英語は今年から4技能すべてがコンピュータ方式に変わったため、正答率ではなく500を基準にしたIRTスコアで表示されます。表の数字は全国の平均であって、合格ラインではありません。
速報版に訂正が出ており、確定版は8月17日公開
8月3日の公表とあわせて、報告書の速報版の訂正も出ています。中学校英語のグラフで平均正答率と平均IRTスコアの表記が入れ替わっていた箇所などが対象で、訂正を反映した確定版は8月17日に公開される予定です。数字を引用するときは確定版を待つほうが確実です。
SNSや動画を平日3時間以上見る子は、中3で49.1%
今回の質問調査では、平日にスマートフォンや携帯電話、パソコン、タブレット、ゲーム機、テレビなどでSNSや動画視聴をする時間を聞いています。学習に使う時間とゲームをする時間は除いた数字です。
3時間以上と答えたのは小学6年生で37.3%、中学3年生では49.1%でした。中3のおよそ半数が、平日でも1日3時間以上を動画やSNSに使っている計算になります。4時間以上に限っても、小6で21.7%、中3で28.5%です。
視聴時間別の正答率には20ポイント以上の開き
中3数学でみると、4時間以上の子は48.7%、30分より少ない子は69.6%です。その差は20.9ポイント。全国平均の57.4%を下回っているのは4時間以上と3〜4時間の層で、グラフではくすみローズで示しました。灰色の「持っていない」は時間の長短とは別の区分のため、色を分けています。
高野智弘
教科別に見ると、影響の出方は科目で違う
| 平日の視聴時間 | 回答割合(小6/中3) | 小6算数 | 中3数学 |
|---|---|---|---|
| 4時間以上 | 21.7%/28.5% | 47.7% | 48.7% |
| 3〜4時間 | 15.6%/20.6% | 52.7% | 55.5% |
| 2〜3時間 | 19.9%/25.3% | 57.3% | 61.0% |
| 1〜2時間 | 20.9%/17.1% | 61.0% | 65.9% |
| 30分〜1時間 | 11.1%/5.2% | 63.7% | 68.9% |
| 30分より少ない | 5.8%/2.0% | 68.6% | 69.6% |
| 持っていない | 4.5%/1.0% | 60.7% | 57.5% |
表からわかるのは、差の大きさが教科によって違うことです。算数・数学は小6も中3も、偶然ながらどちらも20.9ポイント開きました。一方で中3国語は58.5%と71.8%で13.3ポイント。積み上げが必要な教科ほど、開きが大きく出ています。
「スマホを取り上げれば成績が上がる」とは読めない3つの理由
ここからが、この調査でいちばん誤解されやすい部分です。
理由1:持っていない子が最上位ではない
表のいちばん下の行に注目してください。「スマートフォン等を持っていない」と答えた子の正答率は、中3数学で57.5%です。これは30分より少ない子の69.6%より12.1ポイント低く、それどころか2〜3時間見ている子の61.0%より低い数字です。小6算数でも60.7%で、1〜2時間の61.0%とほぼ同じ水準にとどまります。
端末を持たない理由は家庭ごとにさまざまで、この調査からは読み取れません。ただ少なくとも、「持たせない」ことがそのまま高い正答率につながるわけではありません。国立教育政策研究所も、相関係数を出すときにこの層を除外して計算しています。
理由2:相関の強さは -0.20から-0.26にとどまる
視聴時間と正答率の相関係数は、小学校国語で-0.240、小学校算数で-0.252、中学校国語で-0.199、中学校数学で-0.246、中学校英語で-0.257でした。マイナスは「片方が増えるともう片方が減る」関係を示します。
ただし、この程度の数値は「関係はあるが、それだけで決まるわけではない」範囲です。仮に視聴時間がゼロになっても、残りの要因のほうがはるかに大きく効きます。長く見ているから成績が下がるのか、勉強に向かいにくい子が結果として長く見ているのか、この調査では区別できません。
理由3:前年度までの数字とは比べられない
もう1つ、報道でも間違えやすい点があります。令和8年度から、この質問の聞き方が変わりました。前年度までは「携帯電話やスマートフォンで」でしたが、今年度からは「スマートフォンや携帯電話、パソコン、タブレット、ゲーム機、テレビ等」と対象機器が広がっています。
そのため、令和6年度に中3で17.9%だった「4時間以上」が今年28.5%になったからといって、動画を見る時間が増えたとは言えません。数え方そのものが違います。国立教育政策研究所も、前年度までの結果は参考として別枠に掲載しています。教科の正答率にも、報告書は同じ趣旨の注意書きを添えました。
各年度の問題の難易度を厳密に調整する設計とはしておらず、年度によって出題内容も異なることから、過年度の結果と単純に比較することは適当ではないことに留意が必要。
引用:国立教育政策研究所「令和8年度全国学力・学習状況調査の結果(概要)」
高野智弘
文科省が示した方向は「受け身」から「使いこなす」へ
では調査をまとめた側は、何をすべきだと言っているのでしょうか。報告書の同じページには、視聴時間の裏返しにあたるデータが並んでいます。
ICTを使う自信がある子ほど、正答率は高い
「タブレットなどのICT機器で文章を作成することができると思うか」という質問では、そう思うと答えた中3の英語スコアが522、そう思わないと答えた子は424でした。その差は98ポイントです。相関係数は0.242で、SNS視聴時間のマイナス0.257とほぼ同じ大きさが、逆向きに出ています。
同じ端末でも、受け取るだけの使い方と、自分でつくる使い方では反対の結果になる。報告書はこう結論づけました。
これらの結果から、ICTを受動的に利用するにとどまらず、主体的・能動的に活用できるよう、授業等を通じた情報活用能力を育成することが、学力向上に寄与する可能性が示唆される。
引用:国立教育政策研究所「令和8年度全国学力・学習状況調査の結果(概要)」質問調査抜粋版
読書は「長さ」より「好きかどうか」
読書についても似た形が出ています。読書時間の長さと正答率の相関は、小6国語で0.209、中3数学では0.101と弱いものでした。ところが「読書は好きですか」への回答との相関は、小6国語で0.305、中3国語でも0.305と、時間の長さより強く出ています。
その「読書が好き」と答える子は、年々減りました。「当てはまる」と答えた小6は平成28年度の49.5%から今年度は33.0%へ、中3は46.6%から28.7%へ下がりました。授業以外でまったく読書をしない子は小6で26.2%、中3で40.5%です。時間を決めて読ませるより、好きだと思える1冊に出会うほうが効きやすい、と読める数字です。
家庭で今日からできる3つのこと
1つ目は、時間そのものではなく中身を一緒に見ることです。同じ2時間でも、動画を見続けた2時間と、調べて自分で作った2時間は別物だと今回のデータは示しています。取り上げる交渉より、何をしているかを共有するほうが続きます。
2つ目は、つくる側に回る時間を少しだけ混ぜることです。撮った写真をスライドにまとめる、調べたことを表に整理する。夏休みの自由研究はその練習にちょうど向いています。手を動かす教材が必要なら、学年別の無料プリントがこども教材プラスで手に入ります。
3つ目は、寝る前の時間だけ先に決めることです。1日の総量を決めると守れない日に揉めますが、就寝前の30分だけ画面を置くというルールは家庭で運用しやすく、生活リズムの立て直しにもつながります。
画面と学力の関係は、教科書のデジタル化をめぐる議論でも同じ論点が扱われています。紙とデジタルで読解力にどんな差が出たかはデジタル教科書と紙の比較データで詳しくまとめました。生成AIとの向き合い方に迷ったときは子どもの生成AIとの付き合い方を、夏休みの日中の過ごし方については夏休みの学校開放と子どもの居場所もあわせてどうぞ。
高野智弘
よくある質問
全国学力テストの都道府県別の結果はいつ発表されますか?
子どものスマホは1日何時間までにすべきですか?
全国学力テストの結果は内申点や高校入試に影響しますか?
データは責めるためではなく、話すために使う
今回の分析結果は、視聴時間が長い子ほど正答率が低い傾向をはっきり示しました。同時に、持っていない子が最上位ではないことも、前年度と比べられないことも、同じ資料の中に書かれています。数字のいちばん目立つ部分だけを取り出すと、家庭では「だから言ったでしょう」という会話にしかなりません。
夏休みの後半は、生活リズムを戻す時期でもあります。画面の時間をゼロにするのではなく、つくる時間を1つ足す。今年の調査から家庭に持ち帰れるのは、そのくらいのシンプルな話です。
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