学校・制度

学校安全の推進計画が第4次へ、災害時の引渡しは高校50.5%

このニュースを1分で解説
  • 松本洋平文部科学大臣が2026年8月21日、第4次学校安全の推進に関する計画の策定を中央教育審議会に諮問しました
  • 現行の第3次計画は2026年度で終了。第4次計画は2027年度からの5年間が対象になります
  • 諮問理由には熊本地震、猛暑と体育館の空調、クマ被害、SNSに起因する犯罪被害が並びました
  • 災害時の引渡し手順を保護者と決めている学校は全国84.1%。高校は50.5%にとどまります
  • 同じ日に、2028年度から始まる第5期教育振興基本計画も諮問されています

地震が起きたとき、学校はお子さんをどこで、誰に返すのでしょうか。文部科学省は2026年8月21日、2027年度から5年間の「第4次学校安全の推進に関する計画」を中央教育審議会に諮問しました。7月の熊本地震や、この春から相次いだ校外活動中の事故を受けた見直しです。国の調査では、災害時の引渡し手順を保護者と決めている学校は全国で84.1%、高校では50.5%でした。2学期の始まりに合わせて、何が変わろうとしているのかを整理します。

中央教育審議会に諮問された2つの計画|対象は2027年度から

中央教育審議会の第144回総会は、2026年8月21日午前10時から文部科学省の第二講堂でハイブリッド形式により開かれました。この場で松本洋平文部科学大臣が、2つの計画づくりを諮問しています。1つが「第4次学校安全の推進に関する計画の策定について」(8文科教第867号)、もう1つが「第5期教育振興基本計画の策定について」です。

第3次計画は2026年度で期限切れ

学校安全の推進に関する計画は、学校保健安全法第3条に基づいて国が定めるものです。平成24年(2012年)4月に第1次、平成29年(2017年)3月に第2次、そして現行の第3次計画が令和4年(2022年)3月25日に閣議決定されました。第3次計画の期間は2022年度から2026年度までの5年間で、今年度が最終年度にあたります。

第3次計画が掲げた目標は3つでした。児童生徒が安全に関する資質・能力を身に付けること、学校管理下の死亡事故を限りなくゼロにすること、負傷・疾病の発生率を障害や重度の負傷を伴う事故を中心に減らすことです。諮問の理由書は、この5年間の結果をこう書いています。

現行計画に基づく取組の結果、先進的な取組が進められた地域や学校がある一方、いまだ十分とは言えない地域や学校も見られます。また、現行計画策定以降、安全に関する新たな課題も生じており、策定から5年が経過するに当たり、これまでの状況を踏まえた計画の見直しが必要です。
引用:文部科学省「第4次学校安全の推進に関する計画の策定について(諮問)」(令和8年8月21日)

「先進的な取組が進められた地域」と「いまだ十分とは言えない地域」を並べた書き方に、この5年間の評価が表れています。全国一律には底上げできなかった、という認識です。

審議を求められた3つの柱

諮問では、中央教育審議会に3つの柱で検討するよう求めました。1つ目は、第3次計画のあとに起きた社会の変化への対応です。ここで名前が挙がったのが、能登半島地震と同年の豪雨、そして熊本地震でした。学校施設が被害を受け、教職員自身も被災するなかで学校の早期再開が課題になったとして、被災地の学びを守る全国的な体制づくりを挙げています。

同じ柱のなかに、猛暑日の増加による熱中症リスクと、避難所にもなる学校の体育館などの空調整備も入りました。体育館の空調は設置率が3割台にとどまっており、教室との差が大きいテーマです。この点は体育館のエアコン設置率31.7%と教室99.6%の差で詳しく取り上げています。

2つ目の柱は安全教育です。学校安全は「災害安全」「防犯を含めた生活安全」「交通安全」の三領域で整理されており、この三領域を教育活動全体を通じて行うことが求められています。3つ目は、安全を担う組織体制と教職員の研修です。AEDを用いた一次救命処置の実習が十分でない点が、課題として名指しされました。

高野智弘
高野智弘
「国の計画」と聞くと自分には遠い話に感じますが、この計画は各学校が毎年つくる学校安全計画の土台になります。国の計画が変わると、翌年度以降に配られる学校の年間計画やお便りの中身が少しずつ変わっていきます。いま学校で決まっていないことが今回の論点に並んでいる、と読むと、家庭で何を聞けばよいかが見えてきます。

第3次計画の最終年度に何が起きたか|2026年度だけで通知7本

第4次計画の議論が急がれる理由は、2026年度に入ってからの出来事に表れています。中央教育審議会に配られた資料「学校安全の取組について」には、校外活動、部活動の移動、防火防災、クマ被害の4項目が並びました。

春から夏にかけて、文科省が続けて通知を出した

きっかけになった事案は3件です。2026年3月16日に京都府内の高等学校の校外活動中に生徒の死傷者が出る事故が起き、5月6日には学校法人北越高等学校の部活動の遠征でマイクロバスによる移動中に死傷者が出ました。さらに6月19日、東京都北区の小学校で校舎から出火し、複数の児童と教職員が負傷しています。文科省はそのつど通知や事務連絡を出しました。

時期文科省が出した文書背景
2026年4月7日学校における校外活動の安全確保の徹底等について(通知)3月16日の校外活動中の事故
2026年5月8日学校教育活動等における熱中症事故の防止について(依頼)猛暑日の増加
2026年6月学校教育等に関する移動の安全確保のための対策(国交省と共同)5月6日の部活動遠征中のバス事故
2026年6月26日学校における防火防災に係る安全点検等の実施等について(通知)6月19日の小学校の火災
2026年6月26日校外活動の取組状況のフォローアップ依頼(事務連絡)4月7日通知の実施状況の確認
2026年6月30日校外活動等での船舶による運送利用時の安全確保の徹底について(事務連絡)校外活動での船舶利用
2026年7月1日夏休み期間における河川等水難事故防止の普及啓発についての協力願い(依頼)夏休みの水難事故
出典:文部科学省「学校安全の取組について」(中央教育審議会第144回配付資料・令和8年8月21日)をもとに教育Times編集部が作成

4月から7月までの4か月で7本です。年度の前半だけで、これだけの確認作業が学校に積み上がりました。個別の対応が続いた結果、5年計画そのものを組み直す段階に入りました。移動手段の契約や引率体制については、校外活動の安全強化で文科省が示した一体的対策にまとめています。

熊本地震では文教施設956件が被害を受けた

2026年7月28日に発生した熊本地震も、諮問理由に明記されました。文部科学省の被害報(第15報・8月17日17時時点)によると、文教施設の物的被害は9県で956件にのぼります。うち公立学校施設が549校で、小学校234校、中学校134校が含まれます。主な被害は柱や梁の損傷、内装材や設備の剥がれ・落下でした。

同じ時点で、休校となっている学校等は41施設。うち公立学校はゼロで、多くは社会教育施設でした。一方、熊本県内では公立学校21校(小学校11校、中学校9校、特別支援学校1校)が避難所になっています。学校が学びの場であると同時に、地域の避難先でもある状況が続いています。

災害時の引渡しルール、高校は50.5%|備えは学校種で大きく違う

第4次計画の論点を保護者の生活に引き寄せると、いちばん近いのは「災害が起きたとき、学校とどうやり取りするか」です。文部科学省はこの計画に基づき、全国の学校の取組状況を隔年で調べています。最新は令和5年度実績の調査で、全国3万8,171校が対象です。

災害時の引渡しルール 小学校 95.3% 幼稚園 89.2% 特別支援学校 87.9% 全国平均 84.1% 中学校 75.3% 高等学校 50.5% 出典:文部科学省 取組状況調査(令和5年度実績)

災害時の引渡し方法などについて保護者と手順を決めている学校は、全国で3万2,099校、84.1%でした。学校種で見ると小学校が95.3%と高く、中学校は75.3%、高等学校は50.5%です。高校生になると、ルールが決まっていない学校のほうが半分近くになります。

引き渡し訓練は全国の50.9%、高校では1.5%

手順があるかどうかと、実際に試したことがあるかどうかは別の話です。実践的な避難訓練の実施状況を見ると、引き渡し訓練を行っている学校は全国で50.9%でした。小学校は74.8%ですが、中学校は24.1%、高等学校は1.5%まで下がります。

学校種引渡し手順を決めている引き渡し訓練を実施指定避難所になっている
幼稚園89.2%59.9%15.1%
小学校95.3%74.8%88.9%
中学校75.3%24.1%82.9%
高等学校50.5%1.5%63.3%
特別支援学校87.9%51.2%30.0%
全国平均84.1%50.9%72.5%
出典:文部科学省「学校安全の推進に関する計画に係る取組状況調査(令和5年度実績)」全国3万8,171校の集計

表を横に読むと、小学校から高校へ進むにつれて備えが薄くなる形が出ます。中学生や高校生は自分で帰れるという前提が働きやすいのですが、交通機関が止まった夕方ほど、通学距離の長い生徒は帰りにくくなります。

登下校中の発災を想定した訓練は6.2%

訓練の種類ごとの数字も、想定の偏りを示しています。全国の学校で最も多いのは不審者対応訓練の60.8%、次いで予告なしの避難訓練が58.9%、休み時間や給食・清掃中の発災を想定した訓練が52.9%でした。一方、登下校時の避難訓練は6.2%、停電を想定した訓練は5.7%、保護者や地域住民が参加した訓練は19.4%にとどまります。いずれの訓練も実施していない学校も4.6%ありました。

授業中に校庭へ避難する訓練は広く行われている一方、登下校の途中で被災する場面はほとんど想定されていません。通学路で起きることは学校任せにしにくい部分です。

備蓄はあっても、連絡手段の備えは24.8%

災害への備蓄も同じ調査で聞いています。全国の学校で備えられているのは、救急用品・医薬品が73.7%、飲料水・食料が72.0%、ライトなどが58.2%、毛布や寝袋が53.0%でした。これに対して、衛星電話や災害時用公衆電話などの通信手段を備えている学校は24.8%です。特段の備蓄をしていない学校も10.3%ありました。

学校の72.5%は市区町村の指定避難所になっています。小学校では88.9%、中学校では82.9%です。地域の人が集まる場所でありながら、外部と連絡を取る手段は4校に1校という状況が、いまの前提になっています。

高野智弘
高野智弘
数字を見て学校を責める必要はありません。むしろ家庭側で決められることが多い、と受け取ってください。電話がつながらない前提で、誰が迎えに行くか、行けないときは誰に頼むかを家族で決めておく。それだけで、学校が引渡しの判断をするときの迷いが減ります。中学生・高校生のご家庭は、待つのか歩いて帰るのかを本人と話しておくと安心です。

2学期の始まりに、家庭で確認したい5つのこと

第4次計画がまとまるのは先ですが、家庭でできる確認は今日からできます。学校に問い合わせる前に、まず手元の資料を見直すところから始めるのが現実的です。

手元の資料と学校への質問を分ける

入学時や年度初めに配られた書類に、災害時の対応が書かれていることがあります。学校のホームページや学校だよりに載っている場合もあります。次の5点のうち、書類で分かるものと、聞かないと分からないものを分けておくと、やり取りが短く済みます。

5つ目の下校中の想定は、訓練を実施している学校が6.2%と少ない項目です。学校で決まっていないことも十分にあります。その場合は家庭でルールを決めて、お子さんと共有しておけば足ります。

聞くタイミングは2学期の最初の便りが届いたとき

2学期は運動会や遠足、部活動の大会が続きます。行事の案内が届いたときは、安全の話を切り出しやすいタイミングです。「引渡し場所はどこになりますか」のように1つに絞って尋ねると、学校側も答えやすくなります。危機管理マニュアルそのものの見直しも進んでおり、その動きは2027年4月に運用が始まる学校の危機管理マニュアルの新指針で解説しました。防災や安全をテーマにした家庭学習用のプリントなら、こども教材プラスに無料の教材があります。

高野智弘
高野智弘
我が家の連絡先を学校に登録したまま、何年も見直していないご家庭は少なくありません。勤務先が変わった、祖父母が転居した、きょうだいの学校が増えた。こうした変化があると、いざというときに連絡が回りません。9月1日の防災の日は、登録内容を家族で読み合わせる日として使うのがおすすめです。5分で終わります。

よくある質問

第4次学校安全の推進に関する計画はいつから始まりますか?
2027年度からの予定です。現行の第3次計画は2022年度から2026年度までの5年間で、今年度が最終年度にあたります。2026年8月21日に文部科学大臣が中央教育審議会へ諮問した段階で、内容はこれから審議されます。過去の計画は答申を受けて閣議決定される流れで、第3次計画は2022年2月7日の答申を経て同年3月25日に閣議決定されました。
「学校安全の推進に関する計画」と「学校安全計画」は違うものですか?
別のものです。「学校安全の推進に関する計画」は学校保健安全法第3条に基づいて国が5年ごとに定める全国的な計画で、今回諮問されたのはこちらです。「学校安全計画」は同法第27条に基づいて各学校が毎年つくる計画で、施設の安全点検、安全教育の年間予定、教職員の研修などを盛り込みます。国の計画が変わると、各学校の学校安全計画に盛り込む内容も見直される関係にあります。
学校が避難所になったら、授業はどうなりますか?
状況によります。2026年7月28日の熊本地震では、8月17日時点で熊本県内の公立学校21校が避難所となる一方、休校中の公立学校はありませんでした。文部科学省は発災翌日に、熱中症対策の観点から普通教室等を避難所として活用することに関する通知を出しています。全国では学校の72.5%が指定避難所です。そのうち、地域住民の受け入れ時の対応を市区町村の防災担当部局などとあらかじめ協議している学校は80.1%でした(令和5年度実績)。

9月1日までに、引渡しの手順を1つ確認する

2026年8月21日の諮問は、新しい規制を作る合図ではありません。この5年間で「進んだ学校」と「そうでない学校」の差が開いたことを認めたうえで、次の5年で全国の底を上げるための議論を始める、という意思表示です。

その差がいちばん見えるのが、災害時の引渡しでした。小学校は95.3%が保護者と手順を決めている一方、高校は50.5%。訓練まで行っているのは全国で半分です。国の計画が2027年度に切り替わるのを待たなくても、迎えに行く人と場所を家族で決めておくことはできます。9月1日は防災の日です。2学期の最初の週に、1つだけ確認しておくと、いざというときの動きが変わります。

教育Timesは、文部科学省やこども家庭庁の発表を保護者の生活に引き寄せてお伝えしています。ご意見やご質問は運営会社のお問い合わせ窓口までお寄せください。

高野智弘

この記事を書いた人:高野智弘
株式会社SUNCORE代表。教育メディア「教育Times」を運営し、文部科学省・こども家庭庁の公式発表をもとに、保護者向けの教育ニュース解説を発信している。
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