学校・制度

学校の危機管理マニュアル、2027年4月に新指針|保護者周知は64%

このニュースを1分で解説
  • 文部科学省が2026年8月6日、学校の危機管理マニュアルに関する国のガイドライン見直しに着手しました
  • 新しいガイドラインの運用開始は2027年4月1日。年内に結論を出す日程です
  • 検討事項の1つに「保護者等への情報共有」が入りました。現行版は2021年6月です
  • マニュアルを保護者に周知している学校は64.0%。見直しに保護者が関わった学校は11.3%です
  • きっかけは2026年3月・5月・6月に相次いだ校外活動と校舎火災の3件の重大事案でした

2学期が始まると、遠足や部活動の遠征が続きます。お子さんの学校に「危機管理マニュアル」があることを、ご存じでしょうか。文部科学省は2026年8月6日、このマニュアルの土台になる国のガイドラインの見直しに着手し、2027年4月1日から新しいガイドラインを運用する日程を示しました。検討事項には「保護者等への情報共有」が挙がっています。マニュアルを保護者に周知している学校は64.0%どまりという調査結果とあわせて、何が変わるのかを整理します。

危機管理マニュアルの新指針、2027年4月1日に運用開始

文部科学省は2026年8月6日午後3時から、「学校安全の推進に関する有識者会議(令和8年度)第1回」をオンラインで開き、同日に配付資料を公開しました。

議題は座長の選任、この会議で扱う検討事項、そして「学校の『危機管理マニュアル』等の評価・見直しガイドライン」を検討する作業チームの設置です。会議の設置要綱は2026年7月15日に総合教育政策局長が決定しており、設置の趣旨には「修学旅行や部活動等の校外活動時における事故が相次いで発生した」ことが明記されています。

11月・12月に会議、切り替えは年度替わり

公開された検討スケジュールは具体的です。8月6日の第1回のあと作業チームが検討に入り、2026年11月ごろに第2回、12月ごろに第3回を必要に応じて開いて、2027年4月1日に新ガイドラインの運用が始まります。検討事項の資料にも「令和8年中を目途に結論を得るべく、作業チームを設け、検討を進める」と書かれました。

見直しの対象になる現行ガイドラインは2021年6月版です。約6年ぶりの改定にあたります。

検討事項は4つ。うち1つが「保護者等への情報共有」

検討事項のたたき台には、4つの論点が並びます。原文はこうです。

・全ての校外活動時の事前の安全確認における留意点の明確化
・旅客運送利用時の留意点(法令に基づく登録や保険加入の有無の確認等)の明確化
・設置者(教育委員会や学校法人)による定期的なチェックや指導助言を行うなどのプロセスの明確化
・学校危機管理マニュアル等に係る保護者等への情報共有 など
引用:文部科学省「本有識者会議の検討事項等(案:たたき台)」

4つ目に保護者が名指しで登場しています。これまで学校と教育委員会の実務文書だったものが、家庭に内容を伝えるところまで検討の範囲に入りました。

検討事項(文科省)いま起きている問題保護者にとっての意味
全ての校外活動時の事前の安全確認3月と5月に校外活動中の重大事故遠足も部活動の遠征も同じ基準の対象になる
旅客運送利用時の留意点バスの手配で見積書も契約書もなかった事例誰がどう手配したかを学校が説明できるようになる
設置者による定期的なチェック点検が各学校任せになりやすい教育委員会や学校法人が定期的に確認する
保護者等への情報共有マニュアルを保護者に周知した学校は64.0%マニュアルの中身を家庭が知る前提に変わる
出典:文部科学省「本有識者会議の検討事項等(案:たたき台)」(令和8年8月6日)。右2列は教育Times編集部による整理

表の左列は文科省の資料そのままです。4つとも「明確化」「プロセス」という語で書かれています。ルールを増やすのではなく、すでにある確認作業を誰がいつやるのかをはっきりさせる方向だと読めます。

作業チームは3人、会議は非公開

実務を担う作業チームは3人です。社会安全研究所の首藤由紀所長、岩手県立図書館の森本晋也館長、土佐市教育委員会の吉門直子教育長で、オブザーバーとして東京学芸大学の渡邉正樹特任教授が加わります。

この作業チームの会議は非公開です。運営の規定には、児童生徒の事故事案に係る非公表の情報を含めた検討が必要なことが理由として書かれています。有識者会議は原則公開なので、途中経過は11月ごろの第2回の配付資料で追えます。

見直しの引き金になった2026年の3件

なぜこの時期に見直すのか。第1回の資料「学校安全の取組について」に、3件の重大事案が並んでいます。

校外活動の事故2件と、校舎の火災1件

1件目は2026年3月16日、京都府内の高等学校の校外活動中に生徒に死傷者が出た事故です。文科省は4月7日に「学校における校外活動の安全確保の徹底等について」を通知し、修学旅行等で船舶を使う場合は海上運送法の許認可を取得した事業者を選定すべきだと求めました。

2件目は2026年5月6日、学校法人北越高等学校の部活動の遠征でマイクロバスによる移動中に生徒に死傷者が出た事故です。文科省と国土交通省は「学校教育等に関する移動の安全確保に向けた連絡会議」を設置し、6月に対策をまとめています。詳しい経緯は校外活動の安全対策と磐越道のバス事故で整理しました。

3件目は2026年6月19日、東京都北区の小学校で校舎から出火し、複数の児童及び教職員が負傷した火災です。6月26日の通知では、消防法・建築基準法に基づく法定点検と、学校保健安全法に基づく毎学期1回以上の安全点検を漏れなく実施することが求められました。

共通するのは「書面が残っていない」こと

対策の書き方がいちばん具体的だったのは2件目です。文科省の資料には、北越高等学校と蒲原鉄道の間で認識が異なっている状況であること、両者はバスの手配について事前に見積書や契約書を交わしていなかったと回答したことが記されています。

そこで6月の対策では、契約の書面化が繰り返し出てきます。利用前に見積書や契約書で契約主体と内容を明確にする、書面は整理して保存する、貸切バスなら運送引受書を受け取る、レンタカーなら学校自らが借受人となる。いずれも事故が起きてから探すのではなく、出発前に手元にあるかどうかで決まる書類です。

高野智弘
高野智弘
3件を並べると、事故の種類はばらばらなのに、詰まっている場所が似ています。誰が確認する役だったのかが決まっていない、あるいは決まっていても紙が残っていない。遠征の連絡が口頭や連絡アプリだけで済んでいる学校は、実はまだあります。書面で届いているかどうかは、保護者の側からも見えるサインの1つです。

マニュアルを保護者に伝えている学校は64.0%

では今の学校はどこまでできているのか。文科省は「学校安全の推進に関する計画に係る取組状況調査」でこの点を調べています。最新は令和5年度実績で、対象は全国の国公私立の小学校17,981校、中学校9,199校、高等学校4,395校をはじめ計38,171校です。

危機管理マニュアルは学校保健安全法第29条により、すべての学校が作成するものと定められています。作成率は99.5%で、ほぼ全校にあります。問題は、その中身が家庭に届いているかどうかです。

項目令和5年度実績令和3年度実績
危機管理マニュアルを作成している99.5%99.1%
マニュアルを保護者へ周知している64.0%36.0%
見直しに保護者が関わった11.3%17.6%
作成・見直し時に教職員へ周知している97.0%95.2%
災害後の教育継続(BCP)を記載している48.5%29.6%
出典:文部科学省「学校安全の推進に関する計画に係る取組状況調査結果(令和5年度実績)」対象38,171校

保護者への周知は36.0%から64.0%へ伸びました。一方で、見直しに保護者が関わった学校は17.6%から11.3%へ下がっています。伝える学校は増えたのに、一緒に考える相手としては減りました。3校に1校強は、いまも保護者に伝えていません。

見直しの場に保護者がいる学校は11.3%

見直しに誰が関わったかを並べると、11.3%の位置がはっきりします。

マニュアル見直しに関わる人 教職員(安全担当以外) 90.2% 学校設置者 29.4% 関係機関 19.0% 地域住民 12.4% 保護者 11.3% 出典:文科省 取組状況調査(令和5年度実績)

見直しに関わるのは校内の教職員が中心で、外部で最も多いのは学校設置者の29.4%です。保護者は11.3%と最も低い水準にあります。地域住民も16.0%から12.4%へ、関係機関も37.6%から19.0%へ下がり、外部の目が全体的に減っています。検討事項に「保護者等への情報共有」が入った背景には、この数字があります。

マニュアルの交通安全の記載は76.3%

同じ調査に、今回の事案と直結する数字がもう1つあります。マニュアルにどの分野を盛り込んでいるかです。

マニュアルに盛り込んでいる内容令和5年度実績
災害安全(地震・火災など)97.1%
生活安全(防犯を含む)95.5%
交通安全76.3%
インターネットの適切な利用・サイバーセキュリティ38.3%
出典:文部科学省「学校安全の推進に関する計画に係る取組状況調査結果(令和5年度実績)」複数回答

災害安全と生活安全は95%を超えるのに、交通安全は76.3%です。学校安全の3分野のうち、交通安全だけが約4分の1の学校で抜けています。2026年に相次いだ校外活動中の事故は、いずれも移動中に起きました。最も記載率が低い分野で重大な事案が続いたことになります。

高野智弘
高野智弘
11.3%を見て「学校が閉鎖的だ」と受け取る必要はないと思います。マニュアルの見直しは年度末の忙しい時期に回りがちで、外に声をかける余力がないのが実情でしょう。ただ、保護者から「うちの学校のマニュアルは見せてもらえますか」と聞くのは、無理な質問ではありません。2027年4月には情報共有が国のガイドラインに書かれる見込みです。先に聞いておけば、学校にとっても準備の材料になります。

2学期の校外活動までに家庭で確認できること

新しいガイドラインが動くのは2027年4月ですが、待たずにできることが国の資料に書かれています。

校外活動の連絡は「書面等」で届くのが基本

2026年6月にまとまった移動の安全確保の対策には、保護者に関わる項目が直接書かれています。

学校は、児童生徒の校外活動の計画について、書面等により、保護者に対して事前に連絡
引用:文部科学省「学校教育等に関する移動の安全確保のための対策(令和8年6月)概要」

遠足や遠征の計画は、書面などの形で事前に届くのが前提です。日程と行き先だけの短い連絡で終わっている場合、学校に聞いてよい範囲が広がったことになります。

同じ資料では、教育課程内の活動で移動が必要なときは、原則として公共交通機関、貸切バス等またはスクールバスを使うのが基本とされました。学校が事業者を選ぶ際は、法令に基づく許可または登録を受けた事業者かを確認し、貸切バス事業者安全性評価認定制度を参考にします。乗車前にナンバープレートの色、いわゆる緑ナンバーを確認する項目も入りました。

学校に聞いておくと安心な3点

たくさん確認する必要はありません。資料の中身をふまえると、次の3点で足ります。

1つ目は、危機管理マニュアルを見せてもらえるかどうかです。地震や火災のときにどこへ避難し、お子さんをどこで引き渡すのかが、マニュアルに書かれています。

2つ目は、校外活動の移動手段と手配の方法です。自家用車やレンタカーを使う場合、文科省は「安全管理チェックシート」を参考に、事前に引率計画と運転者の資格、車の安全性を確認し、当日の出発前にも状況を確かめるよう求めています。管理職の書面等による事前承認も必要です。

3つ目は、引率の人数と責任者です。資料では、お子さんの発達段階もふまえて教職員等が同乗することが望ましいとされ、部活動指導員や保護者も同乗者に含まれます。誰が付き添うのかは、遠征の連絡で確認しやすい項目です。

火災・熱中症・クマも同じ枠組みで動いている

第1回の資料は防火防災とクマ被害防止も扱い、家庭で使える資材も公開されました。

クマ対策では、文部科学省と環境省が保護者向けリーフレット「保護者のみなさまへクマ出没時の対策を家族で確認しましょう」を出しています。児童生徒向けの動画「クマにおそわれないための3つのお約束」もあり、通学路の対策はクマの通学路対策と文科省の全国要請で詳しく取り上げました。

熱中症は2026年5月8日、夏休みの水難事故は7月1日に、それぞれ注意を促す文書が出ています。安全の話は分野ごとに届きますが、学校の側では同じ危機管理マニュアルに束ねられます。家庭で話す順番も、この単位で考えると整理しやすくなります。学年に合わせた安全や防災の学習プリントなら、こども教材プラスで無料の教材が手に入ります。

国の枠組みも動いています。2026年8月21日には、2027年度からの5年間を対象とする第4次学校安全の推進に関する計画が中央教育審議会に諮問されました。

学校安全の制度は、2026年12月25日施行のこども性暴力防止法とも連動して動きます。就業前の確認制度についてはこども性暴力防止法と保護者がやるべき準備をご覧ください。

高野智弘
高野智弘
3点を全部いきなり聞くと、学校側も身構えてしまいます。おすすめは、2学期最初の懇談会や遠足の連絡が来たときに1つだけ尋ねることです。「引き渡し場所はどこになりますか」だけでも、マニュアルの話に自然に入れます。詰める相手ではなく、一緒に確認する相手として声をかけるほうが、結果としてお子さんの安全に近づきます。

よくある質問

学校の危機管理マニュアルは保護者でも見られますか?
法律上、保護者への開示を義務づける規定はありません。ただし令和5年度実績の調査では、マニュアルを保護者へ周知している学校が64.0%と多数派です。2026年8月6日の有識者会議でも「学校危機管理マニュアル等に係る保護者等への情報共有」が検討事項に挙がりました。まずは担任や管理職に、避難場所と引き渡しの手順を確認したいと伝える形が現実的です。
新しいガイドラインはいつから始まりますか?
2027年4月1日からです。文部科学省が公開した検討スケジュールでは、8月6日の第1回のあと11月ごろに第2回、12月ごろに第3回を必要に応じて開き、2026年中に結論を出す日程になっています。対象は文科省の「学校の『危機管理マニュアル』等の評価・見直しガイドライン」で、現行版は2021年6月です。
部活動の遠征で保護者の車を出すのは問題ないのでしょうか?
禁止されてはいません。2026年6月の対策では、自家用車は教育課程外の活動で使う場面が想定され、保護者会等が所有・管理する車両も類型に含まれます。ただし学校は「安全管理チェックシート」を参考に運転者の資格と車の安全性を事前に確認し、管理職が書面等で事前承認する必要があります。運転者は学校が自らの責任で手配することとされ、レンタカー事業者に手配を依頼するのは認められていません。

2027年4月を待たずに、1つ聞いてみる

2026年8月6日に始まった見直しは、新しい決まりを作る作業ではありません。校外活動の前に誰が何を確認し、その確認を誰がチェックし、結果を家庭にどう伝えるのか。すでにやるべきとされていたことの担当と手順を、はっきりさせる作業です。

危機管理マニュアルは99.5%の学校にあります。足りないのは、書いてあることが家庭に届いているかどうかでした。2027年4月に国のガイドラインが変わっても、実際に動くのは各学校です。だからこそ、2学期の最初の連絡で1つ聞いておくことに意味があります。

教育Timesでは、文部科学省やこども家庭庁の発表を保護者の生活に引き寄せて届けています。ご意見やご質問は運営会社のお問い合わせ窓口までお寄せください。

高野智弘

この記事を書いた人:高野智弘
株式会社SUNCORE代表。教育メディア「教育Times」を運営し、文部科学省・こども家庭庁の公式発表をもとに、保護者向けの教育ニュース解説を発信している。
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