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学校健康診断が見直しへ|眼科・耳鼻科の診察がない学年ができる

このニュースを1分で解説
  • 文部科学省の調査検討会が2026年8月3日、学校健康診断の見直しに向けた中間まとめ案を示しました
  • 眼科・耳鼻咽喉科の医師による診察は、一部の学年で省略できる方向です
  • 「毎学年6月30日まで」の期限は、身体計測や視力検査などの予診と、医師の診察に分けて考える案になりました
  • 下着やタオルをめくる視触診について、学校から保護者への事前説明を徹底する方針が示されています
  • 不登校などで健診を受けられなかったお子さんへの対応は、引き続き検討する課題として残りました

春に配られる健康診断のお知らせを見て、「なぜこの検査があるの」「服はどこまで脱ぐの」と疑問に思ったことはないでしょうか。文部科学省の調査検討会は2026年8月3日、学校健康診断の実施項目や時期を見直す中間まとめ案を示しました。眼科と耳鼻咽喉科の診察を一部の学年で省略し、6月30日の期限にも柔軟性を持たせる内容です。何が変わり、家庭でいつ何を確認すればよいのかを整理します。

学校健康診断の見直し案|眼科・耳鼻咽喉科は一部学年で省略へ

見直しを議論しているのは、文部科学省の「学校における持続可能な保健管理の在り方に関する調査検討会」です。2025年5月19日の第1回から議論を重ね、2026年8月3日の第8回で中間まとめ案が示されました。

きっかけは学校医の不足と、骨太方針の宿題

背景は2つあります。1つは、学校医の高齢化と複数校の兼務が進み、眼科医や耳鼻咽喉科医を確保できない地域が出てきたことです。中間まとめ案によると、2025年度に日本学校保健会が実施した調査では、学校医が「1人配置」の学校は全体の39.2%でした。小学校等で43.2%、中学校等で41.0%、高校等で33.9%です。

もう1つが、政府全体の方針です。2026年7月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太方針)には、次の記述があります。

学齢期の健康診断の在り方の見直し
引用:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026」(令和8年7月21日閣議決定)

この一文には脚注が付いていて、「小児期からの切れ目のない予防医療の観点を含む。」と書かれています。つまり見直しは、単に医師の負担を減らすためだけではありません。学校の健診結果を、その子の生涯にわたる健康管理につなげるという狙いも込められています。

変わる項目と、変わらない項目

中間まとめ案は、健診の各項目を「全員に毎年実施する意義が高いもの」「対象を限定してよいもの」「年1回の健診より日常の健康観察が優先されるもの」の3つの観点で整理しました。主な結論は次のとおりです。

検査項目見直し案の方向家庭への影響
身長・体重/栄養状態毎学年の実施を継続。成長曲線の作成と評価を法令上位置付ける方向身長・体重の推移で低身長や肥満・やせを早期に見つけやすくなる
脊柱・胸郭・四肢の状態高校段階まで毎学年の実施を継続。着衣で測れる検査機器の活用を推進側弯症の早期発見は維持。脱衣を伴う診察が減る可能性がある
眼の疾病及び異常の有無小学4年生までは毎学年。以降は高校段階まで少なくとも隔年眼科医の診察がない学年ができる
耳鼻咽頭疾患の有無小学1・3・5年、中学1年、高校1年で実施耳鼻咽喉科医の診察がない学年ができる
聴力現行の取扱いを維持変更なし
出典:文部科学省「学校における持続可能な保健管理の在り方に関する調査検討会 中間まとめ(案)」(2026年8月3日)をもとに作成

表を見ると、減るのは「医師が全員を診る」項目で、身長・体重や視力・聴力といった学校で行う検査そのものは残ります。むしろ成長曲線は、これまで通知やマニュアルで勧めるにとどまっていたものを、法令に書き込む方向に強まりました。

省略できるのは何年生か

いちばん具体的に生活が変わるのが、眼科と耳鼻咽喉科の診察です。中間まとめ案が示した「省略できる」学年を整理すると、次のようになります。

学校種眼の疾病及び異常の有無耳鼻咽頭疾患の有無
小学校第5学年第2・第4・第6学年
中学校第2学年第2学年以降
高等学校第1学年・第3学年第2学年以降
大学全学生全学生
出典:文部科学省「学校における持続可能な保健管理の在り方に関する調査検討会 中間まとめ(案)」(2026年8月3日)。「省略することができる」とされた学年を抜粋

眼の診察が小学4年生まで毎年残るのは、この時期が視覚の発達期にあたるためです。弱視の治療は10歳前後まで行われることがあり、見逃しの影響が大きいためです。耳鼻咽喉科で小学校の低・中学年を厚くしているのも同じ理由で、免疫の働きが未熟なため中耳炎や副鼻腔炎、扁桃炎にかかりやすいことが挙げられています。

注意したいのは、この一覧が「省略しなければならない」ではなく「省略することができる」だという点です。中間まとめ案は、地域の実情で実施できる場合は全学年に診察を行うことが望ましいとしています。さらに、省略できる学年であっても、日常の健康観察や保健調査票、視力・聴力検査の結果、前年度の健診結果、そして本人や保護者の希望を踏まえて、個別に診察の対象にすることが重要だと明記されました。

高野智弘
高野智弘
ここは覚えておいて損がありません。お子さんが小5で、最近「黒板が見えにくい」と言っている。中2で、鼻づまりが1年中続いている。そういうときは、省略対象の学年でも保健室に相談すれば個別に診てもらえる道が用意されます。保健調査票の自由記述欄は空欄で出さず、気になることを1行でも書いておくと、養護教諭の先生が拾ってくれます。

「6月30日まで」の期限はどう緩和されるのか

学校健診の日程は、法令で期限が決まっています。学校保健安全法施行規則第5条の条文はこうです。

法第十三条第一項の健康診断は、毎学年、六月三十日までに行うものとする。ただし、疾病その他やむを得ない事由によつて当該期日に健康診断を受けることのできなかつた者に対しては、その事由のなくなつた後すみやかに健康診断を行うものとする。
引用:e-Gov法令検索「学校保健安全法施行規則」第5条

ところが現場では、この期限を守り切れていません。中間まとめ案が引く2025年の日本学校保健会の調査では、必須項目をすべて終えた時期が「7月以降」だった学校が7.4%ありました。項目別に見ると、6月30日までに実施できなかった割合は心臓の疾病及び異常の有無が37.4%、耳鼻咽頭疾患の有無が22.6%、脊柱・胸郭・四肢の状態が20.6%、眼の疾病及び異常の有無が19.0%です。

予診は6月30日まで、医師の診察は地域の実情に応じて

そこで中間まとめ案は、6月30日の線を引き直しました。保健調査、身体計測、視力・聴力の検査、問診、胸部エックス線検査、尿検査といった予診にあたる部分は、これまでどおり6月30日までに実施します。一方、学校医などによる診察は6月30日までを必ずしも求めず、地域の実情に応じて実施できる形です。ただし診察もできるだけ早いほうがよく、夏季休業の開始までを目安に示すことが考えられるとしています。

7月に受診勧告が届く年も出てくる

中間まとめ案は、6月30日という期限そのものに明確な医学的根拠があるわけではないとも書いています。それでも身長や体重、脊柱の検査は毎年同じ時期に測ることが望ましく、健診結果は学校生活の配慮に使うため早いほうがよい。学校保健統計調査の集計にも影響します。そうした事情を並べたうえで、動かせる部分だけを動かす形になりました。

高野智弘
高野智弘
家庭側から見ると、「6月末までに結果が全部そろう」という前提が崩れる年が出てきます。内科や耳鼻科の受診をすすめる通知が7月に届く、ということも起こり得ます。夏休みは医療機関が混みますから、受診勧告の紙を受け取ったら、休みに入る前に予約だけ取っておくと安心です。

下着をめくる視触診と、事前説明の徹底

保護者からの問い合わせがいちばん多いのが、健診時の服装です。文部科学省は2024年1月22日に「児童生徒等のプライバシーや心情に配慮した健康診断実施のための環境整備について」を通知し、正確な検査に支障のない範囲で、原則として体育着や下着、タオルなどで身体を覆う考え方を示しました。

環境づくりは進み、説明は遅れている

中間まとめ案は、この通知の考え方は引き続き妥当だとしたうえで、現場の実施状況を数字で示しています。

配慮は進み、説明は遅れる 個別スペースを用意 95.2% 男女別に検査・診察 89.6% 着衣で実施 87.4% 心情への配慮を事前説明 66.3% 検査手技を事前説明 56.9% 出典:文部科学省 中間まとめ(案)2026年8月3日

カーテンや衝立で個別のスペースを用意した学校は95.2%、男女別に実施した学校は89.6%、着衣で実施した学校は87.4%です。環境づくりはかなり進みました。一方、事前の説明は心情やプライバシーへの配慮について66.3%、正確な健診に必要な検査手技について56.9%にとどまり、どちらも説明しなかった学校が16.6%ありました。

めくる必要があるのは4項目

中間まとめ案は、正確な検査のために体育着・下着やタオルをめくって視触診したり、その下から聴診器を入れたりする場合がある項目を4つに特定しています。脊柱の疾病及び異常の有無、胸郭の疾病及び異常の有無、心臓の疾病及び異常の有無、皮膚疾患の有無です。この4項目については、学校医と相談したうえで、健診の前に保護者と本人へ丁寧に説明するよう各学校に周知すべきだとしました。

そして、説明しても理解が得られなかった場合の扱いにも踏み込みました。体育着や下着の上からの診察では疾病や異常が見逃される可能性があることを文書で伝えたうえで、学校で検査・診察を受けるか、個別に医療機関を受診するかの意思確認を行うことも有効だとしています。前提として中間まとめ案は、学校保健安全法が学校に健診の実施義務を課している一方、児童生徒本人に受診義務は定めていない点にも留意が必要だと書いています。

不登校のお子さんが健診を受けられない問題

見直し案には「今後検討すべき事項」も並びました。その筆頭が、学校で健診を受けられなかったお子さんへの対応です。

文部科学省の調査では、小・中学校の不登校児童生徒数は2024年度に353,970人となり、12年連続で増加しました。学校に行けない状態が続けば、健診の日にも登校できません。施行規則第5条のただし書きは「その事由のなくなつた後すみやかに」健診を行うと定めていますが、不登校が長期化した場合にいつ受けるのかは、条文からは読み取れません。

日本学校保健会の2025年調査では、健診を受けられなかった場合の対応を事前に周知していた学校は57.4%でした。具体策としては、実施日が複数ある場合に別日に学校で実施したが62.6%、欠席者にお便りを配って受診を促したが60.2%、学校医と相談のうえ学校医などの医療機関で受けた(保護者が引率)が53.3%です。教育委員会側では、各学校に学校医と相談して個別対応するよう依頼しているが72.2%だった一方、医師会と協力して受診できる体制を整え学校に周知しているのは10.7%にとどまりました。

中間まとめ案は、学校ごとの工夫だけに任せず、教育委員会と地域の関係機関が連携して地域全体で受け皿をつくる仕組みを検討する必要がある、としています。不登校の背景や学校とのつながり方については不登校の原因ランキングの記事でも整理しています。就学前の健診の地域差については5歳児健診の実施状況もあわせてご覧ください。

高野智弘
高野智弘
学校に行けていないお子さんほど、身長や体重の変化、視力の低下に誰も気づかないまま時間が過ぎがちです。担任や養護教諭に「健診だけ別日に受けられませんか」と聞くのは、決してわがままな相談ではありません。制度上も想定された対応です。すでに半数以上の学校が別日実施や医療機関での受診に対応しています。

よくある質問

学校健康診断の見直しはいつから始まりますか?
時期は決まっていません。2026年8月3日に示されたのは調査検討会の中間まとめ案で、実際に運用が変わるには学校保健安全法施行規則の改正などの手続きが必要です。検討会は残された課題の議論を続けるとしています。現時点で確定しているのは方向性だけだとお考えください。
眼科の診察が省略される学年でも、見てもらうことはできますか?
できます。中間まとめ案は、省略できる学年であっても、日常の健康観察や保健調査、視力検査の結果、前年度の健診結果、児童生徒本人や保護者の希望を踏まえて、個別に診察の対象とすることが重要だと明記しています。気になる症状があれば、保健調査票に書くか養護教諭に相談してください。
健診で服を脱ぐのをお子さんが嫌がる場合、断れますか?
学校保健安全法は学校に健診の実施義務を課していますが、児童生徒本人の受診義務は定めていません。中間まとめ案は、事前に丁寧な説明をしても理解が得られない場合、上からの診察では見逃しの可能性があることを文書で伝えたうえで、学校で受けるか医療機関を個別に受診するか意思確認を行うことも有効だとしています。まずは学校に事情を伝えるところからです。

春の健診案内が届いたら、確認したい3つのこと

今回の中間まとめ案は、健診を減らす話ではなく、限られた医師の時間をどこに使うかを組み替える話です。医師が全員を診る項目は絞り込む一方、成長曲線の作成は法令に位置付ける方向に強まり、視触診の事前説明は徹底する方針が示されました。

家庭でできることは3つあります。1つめは、保健調査票を空欄で出さないこと。気になる症状を書いておけば、省略対象の学年でも個別に診てもらえる根拠になります。2つめは、健診前に配られる説明の紙に目を通し、どの項目でどこまで服をめくるのかを本人と共有しておくこと。3つめは、受診勧告が届いたら夏休み前に予約を入れることです。学校の安全や健康を支える制度の全体像は第4次学校安全の推進に関する計画の記事でも扱っています。

教育Timesは、文部科学省やこども家庭庁の発表を保護者の生活に引き寄せてお伝えしています。ご意見やご質問は運営会社のお問い合わせ窓口までお寄せください。

高野智弘

この記事を書いた人:高野智弘
株式会社SUNCORE代表。教育メディア「教育Times」を運営し、文部科学省・こども家庭庁の公式発表をもとに、保護者向けの教育ニュース解説を発信している。
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